ABEJA Tech Blog

中の人の興味のある情報を発信していきます

技術発信をするモチベーション迷子になった時に見る記事

はじめに

ABEJAで技術広報に関する企画を進めている大田黒(おおたぐろ)です。ABEJAの技術やエンジニアリング組織の魅力が伝わるように、記事執筆やイベント企画の旗振りをしています。技術発信に関して、下記について考える機会がありました。きっかけは、社内メンバーとの会話になります。

  • 技術情報の発信って何でやるべきなんだろう? (Why)
  • どんな技術情報を発信していくとよいのだろう? (What)
  • 本業の開発業務も忙しいんだけど....技術発信とのバランスどうすれば良い?

自分自身もエンジニアとして、様々な技術記事の執筆や登壇を行っています。改めてエンジニア視点と事業・会社視点でWhyをいくつか整理したので、簡単に紹介いたします。

(★)大前提として、技術発信に興味がある人・ない人は大きく分かれると思います。また興味がある人の中でもモチベーションは様々だと思います。本記事は技術発信の考え方を強制するものではございません。こんな考え方もあるのかぐらいに思って頂けると良いです。

技術発信Why

エンジニア視点

アウトプットを前提としたインプットは強い

問:「ひとまず自分が理解する前提で整理をした知識」vs「他人に伝える事前提で整理をした知識」 どちらが知識として体系的に定着しているでしょうか??

経験的に後者を選ぶ人は多いと思います。脳は、使われる前提で得た知識は「重要情報」として認識されやすく、記憶にも残りやすいようです。RDBMSで言うところのインデックスを貼りながらレコード追加をしているイメージでしょうか。質の良いインプットをするには、アウトプットはセットだと考えています。

参考:コロンビア大学で興味深い実験例があります。ご興味のある方は下記の本を読んでみてください。理想的なインプット・アウトプット比率は「3:7」と言われています。意外ですよね。

将来の自分やチームの為になる

アウトプットは「誰かに教える、気持ちを伝えるモノ」です。ここでいう誰かは、将来の自分だったり、社内の人だったり、社外の人だったりします。アウトプットの中身は、環境の構築手順だったり、失敗談だったり、成長ノウハウだったり、ポエムだったり様々でしょう。

「この記事誰の役に立つんだろう?」という記事でも、意外と将来の自分や初学者の誰かの役に立つ事があります。(私自身、環境構築などで出たエラーをGoogle検索すると、自分が書いた記事に当たる事があります)

誰の役に立つか考え始めると筆が進まなくなるので、あまり考えすぎないようにしたほうが良いかもしれません。

社外からもフィードバッグを得られる

アウトプットが社内で閉じている場合、フィードバッグは基本的に社内から受け取る事になります。社外(お客様等)から受け取る事もあると思いますが、チームメイト・上長からの割合の方が日常的には多いはずです。社外に記事を出すことで、社外からも取り組みに対するコメントを貰えるようになります。(多少ドキドキしますが...) 「業界から見てどうなのか?」という視点でコメントを貰うのは、成長のきっかけの一つになります。

自己紹介になる

エンジニア採用が進み開発組織が急拡大すると、様々な経歴やエンジニアリング経験を持ったメンバーが増えてきます。新メンバーの得意そうな技術領域はなんとなくわかったとしても、具体的なレベル感等は掴みにくいと思っています。そういったシーンにおいても、技術発信を通した作成したマテリアル等は活躍します。

自分の市場価値を上げる

履歴書・職務経歴書やポートフォリオだけでは、エンジニアのレベル感が掴みにくくなってきています。ここはエンジニアの面接官を経験した事がある方であれば共感するところが多いと思います。

  • 言語・フレームワーク利用経験だけではわからない事が多い
    • 本人が使っているのか、プロジェクトの他のメンバーが使っているのか?
    • 設計から触っていたのか、開発から触っていたのか、運用だけなのか?
    • 他の言語やフレームワークを使える可能性がどれぐらいのあるのか?
    • チームメンバーを牽引できるレベルなのか、スタンスがあるのかどうか?

技術的アウトプットは、対外的な自分の経歴の証明になります。最近では、転職時に自分のプロフィールにアウトプットを添えるのがマジョリティになってきています。

job-draft.jp

事業・会社視点

顧客企業への技術(力)ブランディング

問:組織の”技術力”が見える企業と見えない企業。どちらの製品を購入しますか?

OSSやPaaSの利活用により、最新技術を製品に実装するハードルが下がってきました。例えば、顔検出や特徴量抽出ができるOSSとWebシステムを組み合わせる事で、簡単な顔認証勤怠システムを比較的誰でも作れるようになってきています。技術のコモディティ化が進んでいく反面、組織の「技術力」の違いは外から分かりづらくなっています。テック企業として「技術力」で選ばれる会社になる為に、技術発信は欠かせません。 ここで「技術力」と書いているのは、技術を社会実装をする力を指しています。

tumada.medium.com

少し脱線しますが、技術力には「QCDバランスの実現力」も関わってきます。いわゆるPM(プロジェクトマネジメント)部分もスコープに入ってきます。ビジネスとエンジニアリングの両方に対峙するメンバー(PM)の皆さんにも、アウトプット頂けると良いと考えています。よりお客様に安心して頂ける材料になる事間違えないでしょう。

採用候補者に向けた技術(力)ブランディング

就職・転職は人生のビッグイベントの一つです。採用候補者も全力で企業の事をリサーチしています。技術情報を含めて発信をする事で下記のようなメリットがあります。

  • 潜在層(企業を知らない層):エンジニアに自社や製品をまず知ってもらえる
  • 顕在層(企業を知っている層):技術、組織、文化・人の魅力を正しく伝える事ができる
  • 採用候補者:採用競合企業に対して魅力づけする事ができる。自社を選んで頂ける。
  • 採用後: 入社前後の情報GAPによる採用ミスマッチの低減

特に技術的アウトプット(技術記事、登壇記事など)は、技術組織・文化を知る強い手がかりになります。自己応募の増加や採用パイプラインの歩留まり改善等にインパクトします。

良い技術組織文化の醸成

下記は技術広報を担う組織を作るタイミングで、私がプレゼンした資料の一部になります。技術的アウトプットを通して、こんな業務体験創出ができたらと考えていました。(3~4年前くらいに作った資料の抜粋です)イケてるTechCompanyはこのループがうまく回っているように感じます。良い仲間を集めつつ、お客様や業界に良い提供価値を創出していくには、技術発信は重要であると考えています。

  1. 技術的なアウトプットをする
  2. いい仲間が集まる
  3. 組織力が強化される
  4. 技術チャレンジが加速する
  5. 自己成長、やりがいを感じる

業界への貢献・活性化

近年、Web技術の習得は難易度が下がってきました。 一方で我々が手掛けるような大規模言語モデルの開発はまだまだ開発参入コストが高く、情報も十分にない状況です。積極的に技術情報を発信し、経験や知識を業界に還元していくことで、業界の発展に寄与できます。

まとめ

技術記事を書くべき理由(Why)について、エンジニア視点と事業・会社視点でまとめてみました。技術的アウトプットのメリット>>デメリットだと思うので、個人的には推奨しています。

参考

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