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ドローンにiPhoneを載せて建築物をLiDARスキャンしてみた

はじめに

こんにちは、ABEJAでプロジェクトマネジメントをしている服部です。ABEJAアドベントカレンダー2023の24日目の記事です。皆さん日々の思い出はどういった形で残されていますか?写真?動画?それとも3Dスキャン?今回はドローンにiPhoneを載せることで広がる可能性をご紹介しようと思います。

注意点

ドローン運用の際には、機体の登録や飛行区域の確認などが求められます。本記事では、その点の説明を省きますので、詳細は国土交通省のページをご確認ください。

航空安全:無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール - 国土交通省

前振り

iPhoneで「12以降の"Pro"」に搭載のLiDARスキャン機能ですが、これは距離センサー(LiDAR)とカメラの合わせ技で3Dモデルを生成するものです。

下記のリンクからScaniverseで撮った自然や人工物をご覧ください。

材質にもよりますが、質感まで含めてなかなか綺麗に記録することができます(上述の倒木など、森の香りが漂ってくるようではありませんか?)。

同僚の中にはお子様の成長記録をこれで撮られている方もいます。やはりLiDARを使用していることもあり、長さ情報の精度がそこそこ高いのがメリットですね。

改めて、思い出の記録に良さそうですよね・・・。(今回は取り組み自体の紹介もそうなのですが、ぜひLiDARスキャナ等の3Dでの記録を広められたらと願っております。)

一方、LiDARには測定可能な有効距離がありまして、これがおよそ5m程度。大きな建物など、手の届かないところはスキャンできなかったりするわけです。

転居してしまう思い出の家、取り壊してしまう学校、旅先での巨大な自然構造物。

嗚呼、3Dでその姿が質感とともに残っていたなら・・・!!

本題

長い前振りにお付き合いいただきありがとうございました。意図はお察しいただけたかと思いますが、どんな大きな物でも記録できるように、LiDAR ×ドローンという発想が出てきます。

LiDAR付きドローンという既製品がないわけではなく、地理計測用のドローンなどが販売されていたりしますが、お値段100万円から・・・。歴史的舞台の記録にはもってこいですが、ちょっと個人の思い出の記録には値がはりますね。

LiDARの自作キットも売っていたりするのですが、①これだけでも高価、②画像との掛け合わせが上手くいく保証がない、③ドローンの改造が面倒、という様な事情がありまして、iPhoneを載せるのが一番シンプルにこれを実現できると思いました。

ドローンには可搬重量(ペイロードといいます)があり、今回使用するiPhone12 Proの約200gを載せるには、そこそこの大きさが必要になります。近年のドローン小型化の流れには逆行するようですが、今回はこの条件を満たすDJI FPVを使用します。私のドローン歴は数ヶ月程度ですが、四国の自然で飛ばしたり、アメリカで(ちゃんとFAA(連邦航空局)の許可を取って)飛ばしたりと、基本的なことは経験している感じです。ちなみに私はAndroidユーザーでしたが、これのためだけにiPhoneに乗り換えています(!?)

これらを踏まえて、本記事では簡単な検証の結果を共有させていただきます。

使用したもの

上記のものを揃えれば撮影可能です。私はなぜか香川丸亀のオートバックスで売っていたデモ用DJI FPVを格安で入手したのですが、本記事公開時点でAmazonには売っておらず、入手性は悪そうです。組み立ては難しくはないでしょう。

問題は飛ばす場所ですが、今回は自分の部屋と家の外観を撮影してきました。注意点にも記載しましたが、飛行場所は慎重に選定してください。基本的に、人の迷惑にならないことを念頭におくと良いかと思います。

セットアップの参考にさせていただいた記事:

【iPhone13 Pro】ドローンを使ってiPhoneで空撮する方法【 DJI FPV】 | スカイフィッシュのドローンブログ

構成外観(か、かっこいい・・・)

撮影結果

いつもこんなファンシーな壁紙と暮らしているわけではなく、撮像のズレの検出用に貼りました。壁紙の凹凸、時計のツルツルした質感も判別でき、問題はなさそうです。

さて本題の建築物ですが、家の高いところまで撮れるのは上々ですね。今回iPhoneを固定した向きが若干上向きだったために屋根が撮れていませんが、角度調整で改善できそうです。

撮影時に風が強かったため、たびたび煽られてしまってところどころ歪んでいたり、二重撮影のようになったりしていますが、外壁の質感を捉えるという意味では問題なさそうです。一方、窓ガラスなど透過率が高かったり、光沢のあるものの撮影が苦手なのはLiDARの特徴でもあるので、例えばガラス張りのビルなどの撮影には向かないでしょう。

終わりに

「ドローンにiPhoneを載せて建築物をLiDARスキャンしてみた」、いかがだったでしょうか?

大きな建築物でも、LiDARスキャンできるものですね。

記録の一手法として「アリだな」と思っていただけたなら幸いです。

また、これを機に「こんな記録を残したい!」というようなお話もいただけますと有り難いです。きっと(個人で)駆けつけたいと思います。1ドライバーとしてオーナーから飛行許可をいただける場所を渇望しておりますのでぜひお願いします。

最後になりますが、今後3Dでの記録が広がっていって、様々な記憶が鮮明に残ることを願って止みません。

以上、最後までお読みくださりありがとうございました。

補足

今回はLiDARでの記録に焦点を置きましたが、近年のAI開発の流れで単純な画像・動画ファイルから3Dモデルを生成するアプリ(Luma)がすでに存在します。LiDARの利点は長さ情報が正確なことですが、単にある程度の精度で手軽に3Dの思い出を残したいならこれらの利用がおすすめです!