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Figmaを開く前に、デザイナーが『迷わないチーム』を作るためにMVVとインセプションデッキを作った話

こんにちは、ABEJA Insight for RetailでプロダクトUI/UXデザインを担当している小林です。 この記事はABEJAアドベントカレンダー2025の12日目の記事です。

以前、こちらの記事にてデジタル庁のガイドブックを活用した「ダッシュボードのバリューアップ」について書きました。

今回は、プロダクト改善を迷いなく進めるための、土台として取り組んだ「MVV(Mission, Vision, Value)」と「インセプションデッキ」の策定についてです。

チームの「魂」を再定義する:MVV策定

まず最初に取り組んだのは、組織やチームの行動指針となるMVVの再定義です。 実は、ABEJA Insight for Retailには元々MVVが存在していました。しかし、かっこいい言葉が並んでいるものの、現場の感覚と乖離しており、チーム内でほとんど意識されないものになっていました。

▼ 旧MVVの課題

▼ 叩き台を経てたどり着いたMVV

そこで「チーム全員が覚えられ、今のABEJA Insight for Retailの実態に即した言葉にする」という達成基準を設け、叩き台を作成して議論を重ねました。 特に議論になったのが「やさしい店舗運営パートナー」というフレーズです。 これは元々Value(行動指針)に含まれていましたが、「これは私たちが『やるべきこと』ではなく、最終的に『なるべき姿』だよね」という結論に至り、Visionへと昇格させました。

言葉の配置を整理し、贅肉を削ぎ落として完成したのが現在のMVVです。

Mission
Vision
Value

チームのあり方であるMVVは定まりましたが、これだけでは「このプロダクトは誰の、どんな課題を解決するのか?」という具体的なプロジェクトの輪郭までは見えてきません。 そこで、MVVをプロダクト開発の現場レベルに落とし込むために「インセプションデッキ」を活用することにしました。

ただし、教科書通りに全てを作る時間はありません。
今回はチームの認識合わせに最も重要な「核」となる3項目だけに絞り、スピード感を持って策定しました。

プロジェクトの「方向」を定める:インセプションデッキ

アジャイル開発において、プロジェクトが進むにつれて目的がブレてしまうことはよくあります 。 そこで、MVVをベースにしつつ、このプロジェクト固有の「Why」を言語化しました。

インセプションデッキ : 

プロジェクトの概要(目的、背景、優先順位、方向性など)を
分かりやすく伝えるための資料です。この資料は、メンバー全員が
プロジェクトの開発において共通の理解と目標を持つために作成されます。

プロジェクトは意図が共有されないまま進行してしまうことも珍しくはありません。
しかし、インセプションデッキを活用することで、プロジェクトの方向性が整理され、
メンバー間での認識のズレを防ぎつつ、目標に向かってスムーズに進めることが
可能になります。

インセプションデッキは10個の質問から構成されます。

  1. 我われはなぜここにいるのか
  2. エレベーターピッチを作る
  3. パッケージデザインを作る
  4. やらないことリストを作る
  5. 「ご近所さん」を探せ
  6. 解決案を描く
  7. 夜も眠れなくなるような問題は何だろう
  8. 期間を見極める
  9. 何を諦めるのかをはっきりさせる
  10. 何がどれだけ必要なのか

その中で、特に重要だと感じた❶〜❸を作成しました。

これにより営業資料にも載せることができ端的に、どんなプロダクトなのかをお客さんに伝えることが可能になりました。

デザインへの影響と成果

MVVやインセプションデッキという「言葉の定義」に時間を割いたことによる プロダクトの概念や目的をしっかり言語化したことで Figma上での機能追加やUI変更に対し、明確な問いを立てられるようになりました。

・この機能は、顧客を『データドリブン組織』にすることに寄与するか?(Mission)

・それは『やさしいパートナー』としての振る舞いか?(Vision)

このフィルターを通すことで、不要な議論や手戻りが大幅に減り、 意思決定のスピードが向上しました。

おわりに

デザイナーの仕事は、Figmaで四角形を描くことだけではありません。 「私たちがどこへ向かうのか」を描き、チームをその方向へ導くこともまた、広義のデザインだと私は考えています。 もし、プロジェクトの方向性にモヤモヤしている方がいれば、一度手を止めて、 チームでMVVやインセプションデッキを「自分たちの言葉」で話してみることをお勧めします。

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