はじめに
こんにちは。プラットフォームグループでマネージャーをしております大田黒です。ABEJAには技術が大好きなが多く、面白い技術が発表されるとエンジニア・ビジネスメンバー問わず飛びついていきます。最近、社内有志メンバー数人でStarlinkを試してみたのでその様子について簡単に報告します。
Starlinkとは?
出典: SpaceX
Starlinkは、SpaceXが運用している衛星コンステレーションサービスです。地球上のほぼ全エリア(一部例外あり)をカバーしたインターネット接続サービスです。付属のハードウェア(アンテナやルーター)を設置し、月額費用を払うだけですぐにインターネットに接続する事ができます。2023年4月現在、ハードウェアの初期費用も¥36,500、月額費用も¥6,600程度なので、普通にご家庭の光回線と同じような金額感で導入ができるようになっています。
出典: SpaceX
衛星を使ったインターネット回線が手ごろな金額で試せるのも魅力たっぷりですが、技術者観点で見ても非常に面白いテクノロジーが詰まっています。
- 4000基以上の衛星がLEO(地球低軌道)に配置
- サービスリンクにKuバンドを利用
- 10.7-12.7GHz(宇宙から地球) / 14.0-14.5GHz(地球から宇宙)
- フィーダーリンクにKaバンドを利用
- 17.8-18.6 / 18.8-19.3 GHz(宇宙から地球) , 27.5-29.1 / 29.5-30.0 GHz(地球から宇宙)
- 利得向上・干渉回避のためのビームフォーミング技術を利用
- フェーズドアレイアンテナの利用
Youtubeで仕組みの解説ビデオを見ているだけでも、人類の叡智感があって面白いです。
実験の様子
前置きが少し長くなりましたが、実験の様子についてお伝えできればと思います。ABEJA本社のベランダを使った実験と場所を変えてリベンジした2パターンで実施しました。
①オフィスのベランダで実験 (失敗)
電源を入れて驚いた事として、アンテナが全自動で動く事に驚きを得ました。比較的小さいアンテナではありますが、衛星を追尾する機能がちゃんとついていました。グイングイン動きます。
残念ながらオフィスでの実験ではインターネットにつなぐことができませんでした。周りのビルの遮蔽物が影響か?と思い、位置を変えながら十数時間粘ってみたものの、最終的にインターネット接続を確立できませんでした。ここで残念な事実を知る事になります。改めてサービス提供エリアを確認したところ、2023年3月現在だとABEJAの本社がある港区はサービス提供範囲外でした。
②場所を変えてリベンジ (成功)
今度はStarlinkを山奥に持ってきました。アンテナを車の上に設置し、ルーター本体を建物内に設置して実験をしました。ケーブルが長い為、アンテナとルーターを離して設置する事ができます。
ご注意:Starlinkは2.4GHzと5Ghzのデュアル帯域となっています。特に、無線LANの5GHz帯域(W52・W53)は、衛星リンクや気象レーダーに影響を及ぼすため、屋外における使用は電波法による制約を受けます。ルーターは建物内(屋内)において実験しましょう。
今回は提供エリアの確認が済んでいるのと、周りに大きな遮蔽物がない事が確認できているので心置きなく実験ができます。動かしてみてすぐに気づきがありました。
- 端子はアース付きの3ピンコンセントな為、コンセント形状注意
- 3P→2P変換アダプタを持ってくるのを忘れて、コメリに緊急買い出しクエストしました
- 除雪ヒーターが不要な場合は、事前にアプリ側でOFFにしておくとよさそう
- 3月で気温も低かったせいか気づいたら除雪用ヒーターがONになっており、かなり消費電力が高い状態に。
最初しばらくオフライン表示でしたが、空に向けて20-30分放置していたら気づいたらオンラインになっていました。その間、衛星の信号を探そうとアンテナがぐるぐる動くので見ていて面白かったです。
「キャリブレーションには12時間かかります」という表示が出ていたものの、無事インターネットにつなげる事が出来ました。 Starlinkのアプリに付属しているSpeedtestを実行すると、100MBps以上の速度が出ている事が確認できました。
PingのRTT値としては20-40msecで落ち着いており、安定していました。この調子だと、普通に仕事をする分には全く問題なさそうですね。 私の携帯のテザリング環境だと、RTT値が60msec-80msecであるので、それよりかは低遅延のようです。
通信経路の考察
tracerouteを実行してみました。今回、Google Public DNS Serverをお借りしました。ザクっとですが、下記のような経路でパケットが出ているようです。
192.168.1.1 (Starlinkの手元ルーター) ↓ 100.64.0.1 (RTT時間を考慮すると、多分Starlink側の地上局) ↓ 172.16.249.22 (Starlink側の地上バックボーンの一部) ↓ 149.19.109.16 (Starlink側のインターネットゲートウェイ) [AS14593] ↓ as15169-2.ix.jpix.ad.jp 210.171.224.95 (JPIX側のゲートウェイ) [AS7527] as15169.ix.jpix.ad.jp 210.171.224.96 (JPIX側のゲートウェイ) [AS7527]
RTT時間から考慮をすると2番目のHOPではすでに地上局にパケットが下りている気がします。衛星の中でL3以上ルーティングされていたら面白いなと思っていたのですが、シンプルにL2をつなぐ土管のような立ち位置になっているようですね。「100.64.0.1」というアドレスをみる感じだと、CGNAT(Carrier Grade NAT)・LSN(Large Scale NAT)が利用されていそうですね。キャリア系のネットワーク感がプンプンしてきます。
それ以降はSpaceX(AS14593)→JPIX(AS7527)→Google(AS15169)という順番でつながっているみたいですね。SpaceXがAS番号持っているのが若干驚きでした。
余談: AS14593の経路情報を見ていると、地域ごとに使われるIXも何となく予想がつきますね。日本の場合はJPIXがメインっぽいです。
所感まとめ
スマホアプリとAC100V電源さえあれば、セットアップがすぐにできた
100MBps以上サクッと出るので良かった。
予想以上に低遅延で良かった。
- 固定光回線<Starlink<テザリング携帯回線という雰囲気
回線整備がなされていない離島において、サービス提供とかができそう (事業的観点)
最後に
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