はじめまして。骨とワニが好きなデザイナーの吹上(@takana8)です🐊
昨年夏、 ABEJA の主力サービスのひとつである ABEJA Platform のロゴ(上図)を制作しました。
ABEJA Platform とは、人工知能のブレークスルー技術である Deep Learning を活用し、様々な大量データの取得・蓄積・学習・解析・出力・フィードバックを行うことができる先進的なPaaS(Platform as a Service)です。
今回のテックブログでは、この ABEJA Platform のロゴをどのようなプロセスで、どのような考えに基づいて制作したのかをご紹介します。
どんなロゴが求められていたか
一般に、ロゴに求められる要件というと以下のようなものがあるかと思います*1。
- 視認性:かたちや色がはっきり見えるか、文字を読み違えないか
- 展開性:ディスプレイでも印刷でも問題ないか(解像度や色数に制限があっても問題ないか)
- 普遍性:時間がたっても使えるか
- 国際性:海外展開は考慮されているか
- 環境適応性:既存クリエイティブ(Web やパンフ等)との関係性や今後のサービス展開について考慮されているか
- コンセプトの反映:サービス特性や理念とのズレはないか
- 独創性:オリジナリティが感じられるか
- 美的造形性:美的に好ましいものになっているか
今回制作するロゴに求められる基本的な要件を整理していくと、本プロジェクトで特に重要な観点は「環境適応性」、「国際性」、「コンセプトの反映」、の三点だということが分かりました。
「環境適応性」
デザイン制作時点で、サービスの今後の展開として、「ABEJA Platform」をベースに「ABEJA Platform for Retail」や「ABEJA Platform for Manufacture」などの様々な業界特化型サービス(SaaS:Software as a Service)を随時提供していくことが想定されていました。
このため今回は、サービスロゴのバリエーションが作りやすいか、それぞれの一貫性が保ちやすいか、といった「環境適応性」が重要な要件に挙げられました。
「国際性」
本サービスは日本だけでなく シンガポールをはじめとした海外での事業展開 も進められるため、「国際性」を満たすことは必須要件でした。
「コンセプトの反映」
ロゴはサービスのあり方をビジュアル面で支える軸であり、言わばブランドの顔です。そのロゴがサービス特性や企業の理念・価値観を適切に表現しているかという観点は、マーケティングやブランディングの活動全体に大きな影響を与えます。
今回のように、多様な領域に向けてサービスが広がっていくことを前提としている場合は、特にそうでしょう。
ロゴで表現したいことをまとめると
以上を踏まえ、今回制作するロゴを通して伝えたいことをまとめると、次のようになります。
- 様々な業界や国で提供されるサービスであること
- 最先端テクノロジーである人工知能をベースにしたサービスであること
- イノベーションや倫理観を重視するという ABEJA の理念・価値観
完成したロゴ
早速ですが、完成したロゴはこちら↓
側面から見たヒトの脳を図案化し、ABEJA Platformのベースとなる技術である「人工知能」 をイメージさせるロゴです。
ぱっと見た印象はシンプルな脳のアイコンですが、実は、ちょっと特別な仕掛けが隠されています。
色分けされた各領域の頂点を数えてみると……
右下の小脳を表す領域は頂点が 3 つ、その左隣の脳幹部分は 4 つ、 というように各領域の頂点を1つずつ増やしながら、六角形を分割して切り出しています。このような、ある規則にもとづいた領域分割というギミックで、「アルゴリズム」や「合理性」、「論理性」といった特性を表現しました。
ロゴに込めた意味とデザインプロセス
なぜこのモチーフか
繰り返しになりますが、今回のプロジェクトで求められるロゴの要件は以下の3点でした。
- 様々な業界や国で提供されるサービスであること
- 最先端テクノロジーである人工知能をベースにしたサービスであること
- イノベーションや倫理観を重視するという ABEJA の理念・価値観
これらの要件を満たモチーフやテーマを探るため、まずはひたすらラフスケッチをし*2、このうち見込みがありそうなアイデアをIllustratorで清書していきました。そこから4案ほどに絞り、制作意図をまとめてプレゼンテーションを行いました。
そして最終的に選ばれたのが、六角形のガイドをベースに「側面から見た脳」を図案化したシンボル(上図・右)。
「人工知能」というキーワードからこの「脳」のかたちを想起するのは、人類にとっては自然で普遍的といえるでしょう(ワニのためのロゴとなると、また違ったかたちになってしまうはず🐊)。
ちなみに、ここでガイドを六角形にした理由は、「 ABEJA 」という社名がスペイン語でミツバチを意味することから「ハチの巣(ハニカム)」を連想したことによります。
初期の段階(上図・左)もシンプルで悪くないかたちですが、これからさらに力強いロゴにするために試行錯誤を続けます。そして、手を動かすうちにふと、少し工夫すれば各領域の頂点を1つずつ増やしながら分割していくことができるのでは?と気が付きました。これぞブレークスルー💡 思い付いてしまえば実現するのはそう難しくありませんでした。
このような仕掛けは説明されなければきっとなかなか気付かないもので、ともすれば制作者の自己満足だと受け取られることもあるかもしれません。
しかし、このようなシンプルな図形に深い意図を込めるための「試行錯誤」やそれを実現する思考の「ブレークスルー」こそ、 ABEJA が重視する「イノベーション」に必要な要素そのもの。ロゴにこのような仕掛けと意図を込めることには、「 ABEJA らしさ」を伝えるという点で大きな意義があると考えました。
なぜこの色か
デザインにおいて、色のもつ影響力は思いのほか大きいもの。色を付けてしまうとロゴのかたちに意識が向きにくくなるので、はじめは白黒で作成し、かたちがある程度かたまった段階で色を付けていきました。
上図は検討した色の組み合わせの一部です。色によって印象が随分変わりますね。
いろいろな色の組み合わせを試した結果、今回は青から紫へと変化する鮮やかなグラデーションを採用することとしました。
青や紫は「知性」や「落ち着き」といった印象を与える色であり、ここからイノベーターらしい「先進性」とプラットフォーマーとしての「信頼感」が表現できると考えました。
なぜこの書体か
ロゴタイプの制作にあたっては、プラットフォームサービスの全体像を体現するロゴに適した、現代的かつ先進的な印象のサンセリフ書体を中心にピックアップし、検証を重ねました。どのような雰囲気の書体にするか、大文字か小文字か、シンボルとの組み合わせはどうか。これらを様々な組み合わせでテストし、最終的に「DIN」をベースにすべて大文字のロゴタイプを制作することとしました。
「DIN」は、もとはドイツの工業製品などに記載するために制作された書体です。そのため、スタンダードでかっちりした雰囲気があり、「信頼感」のイメージにもつながります。
今後、サービス提供範囲の広がりとともにロゴタイプ部分が多様化することを想定して、文字のかたちには手を加えすぎない方針とし、各種ロゴタイプを完成させました。
最後に
以上、「らしさ」が伝わるロゴをデザインするために考えたことをざっと紹介させていただきました。
じつは私は去年の夏ごろ ABEJA にジョインしたのですが、入社後の初仕事がこのロゴデザインプロジェクトでした。
会社のことを深く知らなければできない仕事に入社直後に取り組むという、導入としてはなかなかハードルの高いプロジェクト……しかし逆に考えると、この時に会社に対する理解が一気に深まったおかげでその後の仕事がとてもやりやすくなったので、結果オーライだったのかなと思っています。
さて、私たちいま、「試行錯誤」「ブレークスルー」「イノベーション」といったキーワードにビビッときた方を探しております。ぜひ、下記ページにて「話を聞きに行きたい」ボタンを押してみてください!
最後までご覧いただき、ありがとうございました!